このサイトでは、大腸肛門病と骨盤底疾患とに関する情報を、公開していきたいと思います。医学が扱う領域は多彩で、消化器病に限ってもとても広い範囲ですので、ここでは、大腸・肛門・骨盤底に焦点をあて、specialなホームページをつくり、育てていこうと思います。どうぞよろしくお願いします。(since Oct. 2003)
このサイトの元になったのは、大学と大学病院で学生相手に行なった講義です。正式な講義のこともあるし、ベッドサイドでたった一人の学生相手に話した雑談であることもありますが、そのどちらも、若い医学生に伝えたいと思った気持ちに端を発しています。だから、この講義録は、ただの教科書のコピーでなく、自分の経験に基づいていたり、医療の現実に対して抗議する気持ちに基づいていたりしています。
なぜ、大腸・肛門・骨盤底の疾患に特化したホームページを作ろうと思ったのか?
私は、外科医で、消化器一般外科医で、消化器病全般を専門とするものです。消化器病は特殊な疾患ではなく、普通に出会う病気(common disease)です。それを専門にした最初の志は、研究医として特殊なことをするのではなく、何でも診られる医者になりたい、というものでした。「病気よりも人を診る医者」になりたいという、学生時代の気持ちからでした。
腹腔内臓器(つまりお腹)の消化器の手術をしていると、すぐ隣の膀胱や腎臓、子宮や卵巣が気になります。レジデントのころ、上級医の手術に立ち会いながら、上級医がことさら膀胱や子宮の異常を無視して消化器だけの手術に専念するのを見て、「自分が責任ある立場で手術をしているとき、もし、膀胱や腎臓、子宮や卵巣に病気があった場合、適切に処置ができるだろうか?専門外だからといって、知らん振りして良いものだろうか?」と思っていました。
私は、外科医として一通りの技量を身につけた後、それらの臓器を扱えるようにと、他科の研修を希望し、外科医局と泌尿器科医局の好意で、研修を受けることができました。大学の医局制度を考えるとき、これは、とてもラッキーなことといわざるを得ません。そこで初めて、骨盤底の機能を勉強する機会を得ました。
その後、外科医局に戻り、直腸癌手術後の排尿機能から、男性患者の性機能障害、女性患者の性機能障害、排便機能異常、肛門痛、出産による骨盤底障害というように、臨床とそれに直結した、一連の研究を行ないました。このような領域には、科学的な研究者が少ないため、ある意味では、使命感みたいなものを持って行っていました。ですから、自然と、大学では大腸・肛門・骨盤底疾患を中心に診療・研究することが多くなり、大腸内視鏡検査から手術まであらゆることを行い、このようなホームページを作るには、適任者となってしまったわけです。(しかし、一方では、いろいろな病気を見られる医者に成りたいという思いもあり、日常臨床では、いろいろな病気を診ています。実は、乳がんや甲状腺がんも得意な分野ではあるのですが、、、、。しかし、ホームページ作りということでいえば、それらは、他の方に任せるのが適当と思います。)
また、大腸、直腸、肛門、中でも肛門を研究対象にした、もうひとつの理由が実はあります。
それは、肛門が嫌われ者で、研究対象にしようとする人が極度に少ないからです。考えてみてください。消化器という臓器を専門に診療する医者には、消化器内科医と消化器外科医がいます。ですから、ひとつの臓器を二つの科の医師が競争して研究と診療をするわけです。
外科医にとって、手術をしている間は本を読んだり研究をしたりということができませんから、
「手術をすればするほど、消化器内科の医者と外科の医者が、同じことを競争したら、外科医が負けるに決まっている」
と、若いころの私は、考えたのです。(実はそうでもないことがあとになってわかったのですが、若いころはそのことに気づきませんでした。)
ところが、肛門だけは、なぜか、消化器内科の医者は診ようとしません。肛門を専門にしている内科の先生がいたら、教えてください。日本ではいないといっても過言ではありません。
ですから、これならば、絶対、内科医には負けないな、と思ったわけです。そして、さらに、外科医の中にも、肛門疾患のうち、ただ、イボ痔の診断しかできない外科医が多いことに、後年、驚かされました。そして、もっと驚いたのは、肛門科にかかっていた患者さんが、医者を替えようとして、大学病院の私のもとへたどり着く患者さんが多いのですが、それらの多くの患者さんを診た正直な印象として、肛門科を掲げる、ちまたの医院の多くも、私から見ると、イボ痔しか診断できない医者ばかりに映ったのです。
こうなると、わたしは、いっそう、使命感みたいなものを感じて診療を続けざるを得ませんでした。
【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】