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  ここは「大腸・肛門、そして骨盤底の疾患」に特化した、ウェブ情報サイトです。大学病院でのスモールレクチャーに基づいて作られました。
  スモールレクチャーとは、学生や研修医に対してベッドサイドやカンファレンス室で行われる、臨床に即した小規模の講義で、自由な雰囲気で行われるものです。

大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル40


【骨盤底筋群ということばが好きな理由】

 

骨盤底の話をしましょう。

骨盤底とは、骨盤の骨と骨の間の空間に張られた「筋肉でつくられた膜」のことです。

まず、簡単のために、「バケツの底」をイメージしてみてください。バケツの「底」が骨盤底に当たると考えると、なんとなく人間の腹腔がイメージされるのではないでしょうか。

もちろん、4本足で歩行する動物でも骨盤底にあたる筋肉の膜ありますね。でも、本当の意味で「底」といえるのは、人間のような2本足で直立する動物だけです。バケツを横にしていては、底は「底」とはいえないですね。

その骨盤底の「筋肉」という性質に注目して呼ぶときは、骨盤底筋群という言葉を使います。ちなみに、私はこちらの言葉のほうが好きです。それは、「機能」を考慮に入れた言葉だからです。

骨盤底はバケツの底をイメージするのでしたから、バケツが水を支えているように、骨盤底は内臓が下に落ちないように支えていると考えていいのでしたね。実は、それが、私が骨盤底という言葉があまり好きではない理由とつながるのです。

本当は、骨盤底は内臓を支えているばかりではありませんね。骨盤底の大事な点は、骨盤底を尿と便が通過するという点なのです。そう、尿道と直腸肛門管が通過しているのですね。そのために、骨盤底が複雑になり、複雑になるということは、とりもなおさず、いろいろな疾患が生まれる温床になるということなのですね。

バケツはバケツでも穴あきバケツというわけですね。

でも、この穴あきバケツは、そう簡単には、水を漏らさないし、水を捨てたいときは、上手い具合に、底の穴から、水が抜けてくれるのですね。そして、もっと賢いことには、水だけでなく、泥状の物質や、かなり硬い、固体も、上手い具合に、排出したりするのですね。早々、ガスだって、出しますし、ガスと、それ以外のものを分けて出すことだってできるのです。

 

骨盤底は、不要なときは尿や便が漏れないようにし、必要なときだけ、尿と便が出るように、コントロールしているのです。そして、便に混じったガスをガスだけわけで出すこともできる。これらの「機能」に注目すると、自然、骨盤底のことを「骨盤底筋群」と呼びたくなりませんか。

ちなみに、便の場合は、肛門括約筋とその上に連続して位置する、恥骨直腸筋が排便に重要な働きをしています。

骨盤底筋群は随意筋(横紋筋)でできる筋肉で、手や足にある筋肉と同じ仲間の筋肉なのです。しかし、手や足の筋肉は動かすときだけ働き、休んでいるときは、ほとんど完全に休んでいるのですが、一方、骨盤底筋群の筋肉は一見休んでいると思われるときでも、筋肉は、常にある程度の収縮をしています。これは、筋電図検査をすると、筋電図波形が常にみられることから、わかります。

これを肛門管のトーヌスという言葉で表現しているのですが、筋電図とトーヌスの話は、また、別の機会に詳しくしましょう。



【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】


  大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャルの目次
001 このフェブサイトについて
002  なぜ、大腸・肛門・骨盤底の疾患に特化したホームページを作ろうとしたのか?
003  大腸ポリーがありますよ、といわれたら
004  大腸がんの話
005  22歳女性の肛門癌
006  大腸癌の危険率、そして、検診の確認の甘い罠
007  直腸カルチノイド
008  直腸カルチノイドの怪
009  潰瘍性大腸炎と大腸癌
009-2  潰瘍性大腸炎に大腸がんができやすいの?本当なの?
 010  クローン病
 010-2  大腸クローン病
 011  虚血性腸炎
 011-1  虚血性腸炎
 012  薬剤性腸炎=出血性腸炎
 013  抗生物質による偽膜性腸炎
 014   しばらく、感染性腸炎の話をします。
 015  O157腸炎 (O157大腸炎)
 016 トラベラーズ腸炎
 017  ノロウイルス腸炎
 017-2  胃は吐くために進化した臓器である
 018  MRSA腸炎
 019  骨盤炎 ダグラス窩膿瘍
 020  放射線性腸炎
 021  恐るべし、放射線治療後の膀胱
 022  閉塞性大腸炎
 023  腸閉塞と例え話あるいは、例え話の閉塞状況
 024  急性虫垂炎の24歳の女性
025   シマウマのような12歳の少女の虫垂炎
 026  卵巣がんのダグラス氏窩転移
 027  過敏性大腸症
 028  偽性腸閉塞症
 029  慢性便秘
 029-2 便秘ですか
 029-3
 大腸は便秘するためにある。
 030  巨大結腸症とS状結腸過長症
 031  肛門病スペシャル
 032
 肛門病スペシャルの名にふさわしい、ザ裂肛
 033  内痔核 その対称性の乱れ
 034  痔と直腸癌
 035  内痔核の話を続けましょう。
 036  痔と直腸癌 痔という病気
 037
 直腸異物
 038  肛門管の話を続けましょう
 039  内痔核の分類  Goligher分類
 040  骨盤底筋群ということばが好きな理由
 041  陰部神経のドグマ
 042  陰部神経の新しい検査法の開発には理由がある
 043  陰部神経潜時測定で何がわかったのか
 044  肛門を評価する(1)マノメトリーという准基本検査の罠
 045 肛門を評価する(2)デフェコグラフィー
 Defecography 排便造影)について
 046 肛門の“8の字ダンス”
 047  ポリープをとってほしかった
 048  大腸ポリープに対する切除法 blood patch EMRという方法
 049
 別稿 大腸ポリープに対する安全な新しいポリペクトミー(EMR)の方法
 050  診療の秘訣 ブラッドパッチEMR
 051 打撃フォームを変えるにも等しいこと
 052  欠番
 053  消化器外科医の実力
 054  新聞や雑誌に載る「病院の実力」の意味するもの
 055  セカンドオピニオン ブルース
 056 セカンドオピニオン 異聞
 057  不信感という時代のキーワード
 058  そう説明してくれればわかります
 059  セカンドオピニオン異聞 裏の裏
 060  文系のための医学誌
 061  包茎は手術するべきか、受けるべきか。わたしの裏技手術
 062  太ることと大腸癌
 063 さいたま新開橋クリニック
 064   直腸癌は疫学的に異なるカテゴリーに属する
 065  大腸癌の原因は肉食???本当に本当なの?
 066  盲腸ポート
 067  最善を尽くしましょうと請け負っていた外科医が
 068  病気が顔を変える