【卵巣がんのダグラス氏窩転移】
がん細胞が腹腔内にこぼれ落ちると、ダクラス氏窩という、子宮と直腸との間のクボミに、腫瘍を作って、再発することがあります。ダグラス氏窩というくぼみは、起きていても寝ていても、一番低い位置だから、悪いものがたまりやすいのです。ここに再発すると、たいていは、治療不可能と考えられます。しかし、私の経験では、卵巣がんに限っては、ここへの転移は切除可能です。
C県とS県の大学病院から同じような女性が手術を求めて私のもとへやってきました。2人とも各大学病院で、肛門や膀胱も含めて切除することを説明されて、困り果てて私のところまで来たのです。(その後、続々、同じような患者さんがすぐ来ています。)
しかし、卵巣がんのダグラス氏窩転移の場合、肛門を切除する必要はほとんどありません。膀胱もしかりです。二人とも、癌を完全切除できて、さらに、肛門は温存することが出来ました。その後、年余にわたり、再発していません。
大学病院での意見がどこまで正しいか、2人とも首を傾げています。しかし、大学病院といっても、決断をするのは、1人か2人です。そして、そのかたがたと、たとえば、私と、どちらの意見が正しいか。
たとえば、私が、その大学の医局に属していたとしたら、カンファレンスで、意見をぶつけあい、私の意見に、全体の意見が変わるかもしれません。もし、その医局に私がいなければ、違う意見になります。大学病院といっても、人材は薄いのです。ですから、そこでの意見は、かなり限定的なもので、難しい症例では、そこのスタッフが違えば、当然、違う結論に到達したかもしれません。
大学病院の巨大なビルディングを信じてもいいけれど、ビルディングの大きさに、正しさの根拠はありません。エジプトのピラミッドの大きさに、王様の意見の科学的正しさが全くないのと同じです。
論理的に言えば、ピラミッドやビルディングの大きさは、それが大きい建造物であるということを証明するだけのもので、その他のなにものをも示すものではないのです。
【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】