【肛門管の話を続けましょう】
肛門管の話を続けましょう。この辺の話になると、医者の何%ぐらいが知っているのかなぁ、と思ってしまうぐらい、知らない医者にとっては「マニアックだ」といわれかねない知識ですね。肛門科を掲げている医者でも、どのくらいの医者が、どのくらいに、認識しているのかなぁ。
肛門管は肛門の狭くなっている管の部分です。内圧を測定すれば、当然高くなっているので、肛門生理学的には昇圧帯とも言うこともあります。(ここまでは、当たり前の話で、医学を勉強していなくても、考えてみれば、常識で想像がつく世界ですよね。)
肛門管の圧を連続的に測定していると、圧は、高くなったり、低くなったり、の、サインカーブを描くのですね。つまり、肛門管は、自律的に収縮をしているということなのですね。これは、無意識に、です。お尻に意識を集中しても、気づきません。
でも、これも想像すれば、そんなものかなと、理解できますね。というのは、肛門管の内括約筋は、大腸の固有筋層とつながっていて、腸の自律運動から、なんとなく想像できるではありませんか。
肛門管の圧を測定していると、特に血圧の高い人は、肛門の中で、痔動脈の拍動を、つまり、痔の血圧をモニターできるのですね。痔のケツアツ、なんて、親父ギャグみたいになってしまいますが、親父ギャグって悲しいですね。しかし、肛門管の律動波形は、動脈の拍動とはまったく別で、肛門管自体の収縮なのです。いまは、その話をしているのですよ。
世界には、いろいろと不思議な方がいるもので、肛門管の律動波形を肛門管の奥と手前で測定し、その周波数に、ずれがあることを発見している医者がいるのですね。肛門管の律動波形の周波数は、肛門管の奥のほうが手前よりも周波数が高いのです。
そのような事実がわかったら、次におこなうのは、その生物学的な意味づけですね。その意味付けは、こんな風に考えられました。
直腸にたまったものを肛門管が開いたり収縮したりすることで、肛門管の上部の粘膜に触れさせ、肛門管の上部の粘膜という最も知覚に関係する部位で、直腸にたまったものが何であるかをしらせるのだ。というのです。このために、肛門管の律動波形は重要であるし、周波数の異なりも役に立つというのですね。本当かなぁと思う一方で、確かに、合理的な説明だなぁという気もしますね。これをサンプリング現象といいます。
また、このサンプリング現象は、直腸にものがたまると、少し、肛門が緩んで、また、元に戻るという、直腸肛門抑制反射も役に立っているのだと説明付けられています。こ直腸肛門抑制反射は、小児外科で扱うことの多い先天性の病気、ヒルシュスプルング病、の診断で発達した検査ですが、しかし、それはまた、けして子供だけの病気ではないのですが、また、別の機会に、お話します。
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