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  ここは「大腸・肛門、そして骨盤底の疾患」に特化した、ウェブ情報サイトです。大学病院でのスモールレクチャーに基づいて作られました。
  スモールレクチャーとは、学生や研修医に対してベッドサイドやカンファレンス室で行われる、臨床に即した小規模の講義で、自由な雰囲気で行われるものです。

大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル48


【大腸ポリープに対する切除法 blood patch EMRという方法】


わたしの開発した大腸ポリープの切除法を紹介します。

大腸ポリープを切除する場合、確実に切除することと安全に切除することが、絶対条件です。当たり前のことですね。

この治療を受ける立場に立てば、安全でなければ、これほど怖いものはありません。

大腸という深くて長いトンネルの中での手術なのです。ひとたび、トラブルが起こったら大変なのはちょっと想像しただけでわかるでしょう。

安全に大腸ポリープを切除するために、臨床医としておこなわなければならないのは、まず、基本的なテクニックをマスターし、いわゆる名人になることです。たいていの医者は、名人になることをあきらめてごまかしている、(患者を? イエス、そして自分を)

少数の医者は、名人に近づいて満足している。(患者も、医者も)

そしてさらに少数の医者は、名人に限りなく近づいて満足している。

そして、さらに少数の医者が、名人に限りなく近づいて、さらに飽き足らず、もっとすぐれた方法を開発する。臨床医の工夫は、臨床の能力がその時点での世界最高に達して、なお、良いものを目指そうというときに生まれるものであると信じます。

従来、きのこのように飛び出たポリープをとるときは、そのポリープにスネアとよばれる金属の輪を回してかけて、電気で焼ききっていました。

きのこのように飛び出ていないいわゆる平坦型のポリープをとるために、平坦型ポリープの下の層に生理食塩水を注入してきのこのように盛り上がらせ、ポリープを切除する、ストリップバイオプシー(内視鏡的粘膜切除術、EMR)という方法が、開発されました。従来の方法は、周囲の組織も必要以上に焼いて、場合によっては、大腸に穴が開いてしまう事故も少なからず起こっていましたが、ポリープの下に生理食塩水を注入してポリープを切除する内視鏡的粘膜切除術、EMRという方法は、電気で焼き取る際、下の組織との間の生理食塩水のクッションを用意することとなり、従来の方法より安全であることが、わかりました。

その後、注入する物質は、生理食塩水の代わりに、いろいろな物質が用いられる工夫がおこなわれました。しかし、その物質の選択基準は、切除操作にかかる時間が長くても大丈夫なように出来るだけ長い時間粘膜下層にとどまる物質開発と実践だけで、安全性を考慮した物質の探求はほとんどおこなわれませんでした。

そこでわたしは、長い臨床経験の中で、内視鏡的ポリープ切除をした際、粘膜下に血腫が出来る出来事が起こったことからヒントをえて、意図的に、粘膜下層に患者さんの自己血液を注入し、長時間の粘膜の膨隆と血液による止血効果の両者を狙った、新しいポリープ切除法、ブラッドパッチEMR(血液パッチポリープ切除術)を開発しました。アイデアは至極簡単です。なぜ、今までこのような方法に気がつかなかったのか不思議でなりません。本人の血液ですから、何の害もありません。まさに、コロンブスの卵といえます。

このようにして開発したブラッドパッチEMRを紹介します。ここをクリックしてください。

なお、このポリペクトミーの方法は、何度か学会で発表し、2006年には米国の学会誌にも論文として、出版報告しました。

実は、この論文投稿の過程で、学会誌のレフリーと意見が合わず、1年ぐらい、余分に時間を費やしてしまい、また、さらに、eメールの手違いで3ヶ月ぐらい、出版が遅れてしまったのです。そして、私の論文が出ると、すぐに同じアイデアで、アメリカのチームから動物実験の論文が出ました。また、ドイツのチームからも動物実験の学会報告がありました。驚きました、私が、片田舎で、臨床で用い、また、日本の学会で発表しているころは、世界中のどこにも見当たらないテクニックであったのに、あっという間に、ヨーロッパと、アメリカで、動物実験が組まれたのです。結局、一足先に、私の論文が印刷されたため、いわゆるプライオリティーという意味では私に分あるのですが、もし、論文印刷がさらに遅れていたら、片田舎で臨床をしている私は、ほとんど無視されたままになってしまったでしょう。

日本人が世界に仕事を発表する難しさを痛感させられる出来事でした。


【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】


  大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャルの目次
001 このフェブサイトについて
002  なぜ、大腸・肛門・骨盤底の疾患に特化したホームページを作ろうとしたのか?
003  大腸ポリーがありますよ、といわれたら
004  大腸がんの話
005  22歳女性の肛門癌
006  大腸癌の危険率、そして、検診の確認の甘い罠
007  直腸カルチノイド
008  直腸カルチノイドの怪
009  潰瘍性大腸炎と大腸癌
009-2  潰瘍性大腸炎に大腸がんができやすいの?本当なの?
 010  クローン病
 010-2  大腸クローン病
 011  虚血性腸炎
 011-1  虚血性腸炎
 012  薬剤性腸炎=出血性腸炎
 013  抗生物質による偽膜性腸炎
 014   しばらく、感染性腸炎の話をします。
 015  O157腸炎 (O157大腸炎)
 016 トラベラーズ腸炎
 017  ノロウイルス腸炎
 017-2  胃は吐くために進化した臓器である
 018  MRSA腸炎
 019  骨盤炎 ダグラス窩膿瘍
 020  放射線性腸炎
 021  恐るべし、放射線治療後の膀胱
 022  閉塞性大腸炎
 023  腸閉塞と例え話あるいは、例え話の閉塞状況
 024  急性虫垂炎の24歳の女性
025   シマウマのような12歳の少女の虫垂炎
 026  卵巣がんのダグラス氏窩転移
 027  過敏性大腸症
 028  偽性腸閉塞症
 029  慢性便秘
 029-2 便秘ですか
 029-3
 大腸は便秘するためにある。
 030  巨大結腸症とS状結腸過長症
 031  肛門病スペシャル
 032
 肛門病スペシャルの名にふさわしい、ザ裂肛
 033  内痔核 その対称性の乱れ
 034  痔と直腸癌
 035  内痔核の話を続けましょう。
 036  痔と直腸癌 痔という病気
 037
 直腸異物
 038  肛門管の話を続けましょう
 039  内痔核の分類  Goligher分類
 040  骨盤底筋群ということばが好きな理由
 041  陰部神経のドグマ
 042  陰部神経の新しい検査法の開発には理由がある
 043  陰部神経潜時測定で何がわかったのか
 044  肛門を評価する(1)マノメトリーという准基本検査の罠
 045 肛門を評価する(2)デフェコグラフィー
 Defecography 排便造影)について
 046 肛門の“8の字ダンス”
 047  ポリープをとってほしかった
 048  大腸ポリープに対する切除法 blood patch EMRという方法
 049
 別稿 大腸ポリープに対する安全な新しいポリペクトミー(EMR)の方法
 050  診療の秘訣 ブラッドパッチEMR
 051 打撃フォームを変えるにも等しいこと
 052  欠番
 053  消化器外科医の実力
 054  新聞や雑誌に載る「病院の実力」の意味するもの
 055  セカンドオピニオン ブルース
 056 セカンドオピニオン 異聞
 057  不信感という時代のキーワード
 058  そう説明してくれればわかります
 059  セカンドオピニオン異聞 裏の裏
 060  文系のための医学誌
 061  包茎は手術するべきか、受けるべきか。わたしの裏技手術
 062  太ることと大腸癌
 063 さいたま新開橋クリニック
 064   直腸癌は疫学的に異なるカテゴリーに属する
 065  大腸癌の原因は肉食???本当に本当なの?
 066  盲腸ポート
 067  最善を尽くしましょうと請け負っていた外科医が
 068  病気が顔を変える