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  ここは「大腸・肛門、そして骨盤底の疾患」に特化した、ウェブ情報サイトです。大学病院でのスモールレクチャーに基づいて作られました。
  スモールレクチャーとは、学生や研修医に対してベッドサイドやカンファレンス室で行われる、臨床に即した小規模の講義で、自由な雰囲気で行われるものです。

大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル31


ここからは、肛門病スペシャル、です。


【肛門病スペシャル

 

三大肛門疾患と呼ばれるものは、内痔核、裂肛、痔ろうです。これは、先日、テストに出しましたね。易しい問題でした。学問的にはなんら面白みのない問題ですが、これくらい知らないと、まったくお話になりませんね。でも、出来ない人が結構いましたよ。学生だから仕方ないけれど、医師になっても、学生時代より知識のない人はたくさんいますから、こんな、事実も知らないお医者様が、結構いるのかもしれませんね。

 

本当の専門家で、こんな問題を出されて間違う人はいませんが、うその専門家では、結構間違う人がいるのかもしれません。うその専門家とは、悲しいことに、外科医ないし消化器外科医のことです。肛門病は、なぜか、消化器内科医は扱いませんから、外科医にそんな患者さんは回ってくるのです。そこで大変なことがおこります。肛門疾患を診ることを期待されている医者が、実は、よくわかっていない場合は。

 

肛門疾患で、素人様でも知っているのは、内痔核です。いぼ痔と呼ばれたりします。いぼとは関係ないのですが、まあ、そう呼ばれて、そんな風に理解されています。これは、さすがに、肛門を診たことのない外科医でも知っています。実は、これしか知らないのじゃないかと思われる外科医がけっこう多いのですね。

まず、お尻の不調を訴えて受診した患者さんは、外科医によって診察され、内痔核があるかどうか、2つに分けられます。内痔核がないと、気のせいだと言われて追い返されます。しかし、症状は続きますから、また、同じところを受診したりすると、お知りばかり気にしている気の変なやつだという風に思われて、さらに追い返されるか、神経症の薬やうつ病の薬が処方されたりします。別の外科医をたずねても、同じことの繰り返しです。こんな患者さんが、わたしのところに紹介されてきて、実は、内痔核でもなく、また、珍しい病気でもない、三大肛門疾患のうちのどれか、つまり、裂肛や痔ろうであることは、良くあることです。こんなとき、俺って名医なんだなぁと思ったりしますが、よく考えると、名医でもなんでもないのですね。だって、三大肛門疾患と呼ばれている病気を診断しただけなのですから。咳をしている患者さんを、気管支炎ですね、と診断するのと同じくらい当たり前のことですから。

でも、本当にこんなことが大学病院内部でも結構あるし(まあ、若い医者が多いからしかたがないかなぁ)、市中で肛門が得意と口コミの外科クリニックからの紹介患者さんでもこんなことが頻繁にあります。

しかし、この患者さんは、まだ、幸運でした。一番不幸な患者さんは、たまたま内痔核が大きくて、内痔核と診断されてしまった方々です。本人が訴えている症状の原因は、内痔核ではないのに、たまたま、内痔核があったものだから、そのお医者様に、わが意を得たり!内痔核です!薬はこれね!とか手術しましょ!とか、順調にことが運んでしまった方です。

もちろん、こんな方は、手術をしても、症状は取れません。悲しいですね。

 

でも、なぜ、こんなにも、(といってもどのくらいかわからないでしょうが、結構、多いのです)、三大疾患さえわからない外科医がいるのでしょうか。肛門疾患を診ることを期待されているのに。

実は、教育を受け持っている大学病院や、一般の大病院に、肛門疾患が専門の医者がほとんどいないからです。そして、かつては、そのような治療も大病院ではおこなっていませんでした。癌の治療に忙しいのですから。

肛門疾患は、基本的には、機能の疾患です。癌などの腫瘍は、形態の疾患です。外科の多くは、形態を相手にしています。ですから、このようなことがおこるのだと思います。そして、外科で出世するためには、癌の臨床と研究をしなければだめでした。逆に言うと癌の研究のほうがしやすいのです。ですから、こういう風になっていたのではないでしょうか。

じゃ、大学で、肛門の機能を研究し治療していた、著者の場合はどうなのだって?

訳あって出世したくなかったのですね。それがポリシーだったのですね。

 

ところで、話は変わりますが、英国の大腸肛門疾患の専門病院、セントマークス病院に留学した最初の日、外科部長室に呼ばれた時のことを思い出します。日本の大学病院でどのような病気を手術して来たのかと、質問されたとき、のことです。

「手術の95%以上は、癌の大きな手術です。」とわたしが答えると、

それをきいて、ほくそえむようにいわれました。「われわれは、大腸肛門病の専門家だから、大腸癌の手術はしない。癌は、一般病院の一般医の仕事だ。われわれは、スペシャリストだから、もっと困難な大腸の手術をする」

でも、実際は、かなりのリップサービスでした。けっこう、その病院でも大腸癌の手術をしていましたよ。でも、心意気は、そういうことだったのですね。『大腸の専門家だから、大腸癌の手術はしない。一般病院に任せておけばいい。われわれは、もっと困難の病気の治療をする。』それが、機能性の疾患のことなのですね。

   【web site 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】

  大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャルの目次
001 このフェブサイトについて
002  なぜ、大腸・肛門・骨盤底の疾患に特化したホームページを作ろうとしたのか?
003  大腸ポリーがありますよ、といわれたら
004  大腸がんの話
005  22歳女性の肛門癌
006  大腸癌の危険率、そして、検診の確認の甘い罠
007  直腸カルチノイド
008  直腸カルチノイドの怪
009  潰瘍性大腸炎と大腸癌
009-2  潰瘍性大腸炎に大腸がんができやすいの?本当なの?
 010  クローン病
 010-2  大腸クローン病
 011  虚血性腸炎
 011-1  虚血性腸炎
 012  薬剤性腸炎=出血性腸炎
 013  抗生物質による偽膜性腸炎
 014   しばらく、感染性腸炎の話をします。
 015  O157腸炎 (O157大腸炎)
 016 トラベラーズ腸炎
 017  ノロウイルス腸炎
 017-2  胃は吐くために進化した臓器である
 018  MRSA腸炎
 019  骨盤炎 ダグラス窩膿瘍
 020  放射線性腸炎
 021  恐るべし、放射線治療後の膀胱
 022  閉塞性大腸炎
 023  腸閉塞と例え話あるいは、例え話の閉塞状況
 024  急性虫垂炎の24歳の女性
025   シマウマのような12歳の少女の虫垂炎
 026  卵巣がんのダグラス氏窩転移
 027  過敏性大腸症
 028  偽性腸閉塞症
 029  慢性便秘
 029-2 便秘ですか
 029-3
 大腸は便秘するためにある。
 030  巨大結腸症とS状結腸過長症
 031  肛門病スペシャル
 032
 肛門病スペシャルの名にふさわしい、ザ裂肛
 033  内痔核 その対称性の乱れ
 034  痔と直腸癌
 035  内痔核の話を続けましょう。
 036  痔と直腸癌 痔という病気
 037
 直腸異物
 038  肛門管の話を続けましょう
 039  内痔核の分類  Goligher分類
 040  骨盤底筋群ということばが好きな理由
 041  陰部神経のドグマ
 042  陰部神経の新しい検査法の開発には理由がある
 043  陰部神経潜時測定で何がわかったのか
 044  肛門を評価する(1)マノメトリーという准基本検査の罠
 045 肛門を評価する(2)デフェコグラフィー
 Defecography 排便造影)について
 046 肛門の“8の字ダンス”
 047  ポリープをとってほしかった
 048  大腸ポリープに対する切除法 blood patch EMRという方法
 049
 別稿 大腸ポリープに対する安全な新しいポリペクトミー(EMR)の方法
 050  診療の秘訣 ブラッドパッチEMR
 051 打撃フォームを変えるにも等しいこと
 052  欠番
 053  消化器外科医の実力
 054  新聞や雑誌に載る「病院の実力」の意味するもの
 055  セカンドオピニオン ブルース
 056 セカンドオピニオン 異聞
 057  不信感という時代のキーワード
 058  そう説明してくれればわかります
 059  セカンドオピニオン異聞 裏の裏
 060  文系のための医学誌
 061  包茎は手術するべきか、受けるべきか。わたしの裏技手術
 062  太ることと大腸癌
 063 さいたま新開橋クリニック
 064   直腸癌は疫学的に異なるカテゴリーに属する
 065  大腸癌の原因は肉食???本当に本当なの?
 066  盲腸ポート
 067  最善を尽くしましょうと請け負っていた外科医が
 068  病気が顔を変える