【O157腸炎 (O157大腸炎)】
これは、何年か前、マスコミをにぎわしましたので、名前を聞いた事がある人が多いと思います。
O157(オーいちごーなな)という大腸菌によって起こる、大腸炎です。ひどいものは、下血(血便)を認めるだけでなく、腹水も出現して、救命ために〔結果的には不必要だったかもしれない〕手術をされてしまったことをも伝え聞くほど、かなり手厳しい、腸炎です。一般的には5%近い死亡率と言われます。
でも、この診断には、まず、O157であるかもしれないと疑うことが大事です。
疑えばO157大腸菌抗体キットというものもありますから、外来で、一発でわかってしまいますね。何の芸もいりません。
でも、この病気をすぐ疑えるだけの知識と経験があるかが、診断の分かれ目になるのですね。このO157腸炎になったときは、病院や医者を選ぶ暇はありませんから、患者さんがすぐに診断されるかどうかは、運かもしれませんね。
(伝え聞きくだけでなく、つい最近、当院でO157腸炎を疑って治療中の少年が、「手術の必要のない病気です、薬で様子を見ましょう」と話していたにもかかわらず、なかなかすぐに腹痛が改善しないためか、あるいは私が信用されていなかったためか、当院に連絡なしに某医療センターを夜間に受診し、その夜のうちに緊急手術を受けて、腸まで取られてしまうという「事件」がありました。もちろん、手術と関係なく翌日には腹痛も改善しましたが。とくとくとして緊急手術をした医師があたかも手術をすべき重大な病気を当院が見逃していたとも言わんばかりに、報告の電話をかけてきました。「重症な病気を手術して救命してあげたぞ、お前たちのしりぬぐいで夜の間、手術していたんだぞ」とも言わんばかりに、勢い込んで。わたしは、「あれはO157腸炎で手術の必要のない病気と判断していたのですが、そうではなかったのでしょうか」と返事をするのが精いっぱいでした。寂しい気持ちで電話を切りました。また、母親からも電話が入り、緊急手術を受けたとのこと、まるで、病気を見逃して患者を放置していた悪徳医者を責めるような感じで。でも、その直後、当院で検査をしていた少年の便の結果が検査センターから緊急電話で入り、「O157が検出されました。」とのこと。やはり、O157だったのです。その後、すぐ保健所に届け、その後の騒動は想像にお任せします。後日母親から連絡が入り、転院したことを後悔しきり。大事な息子の腸が取られてしまったのですから。
O157腸炎は保健所に届け出なければならない疾病です、チェックしておいてくださいね)。
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