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  ここは「大腸・肛門、そして骨盤底の疾患」に特化した、ウェブ情報サイトです。大学病院でのスモールレクチャーに基づいて作られました。
  スモールレクチャーとは、学生や研修医に対してベッドサイドやカンファレンス室で行われる、臨床に即した小規模の講義で、自由な雰囲気で行われるものです。

大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル36


【痔と直腸癌 痔という病気】


痔と直腸癌は、関係が深いというか、関係が無いというか、とにかく、関連付けて考えなければならない、疾患です。しかし、まず、「痔」について説明しましょう。

 

痔という言葉は、便利な言葉です。

もともと、痔という漢字は、肛門を外から眺めたときの形、つまり、菊のご紋のような形、に、寺という漢字が似ているために、それにやまいだれをつけて、肛門の病気を意味するようになったのだという、説があります。どこまで正しいかわかりませんが、ことほど左様に、痔という言葉は、肛門部の疾患、ということを示す言葉なのです。

ですから、わたしは痔です。という言葉は、わたしは、肛門の何らかの病気です。という意味であって、近代医学で言うところの「病名」を示す言葉ではないのですね。

ですから、「痔」は、とても便利な言葉といえます。

「わたしは、痔です。」「貴方は、痔です。」には、間違いがありません。患者さんが使えば、わたしは、肛門が何らかの病気ですということを伝えられますし、医師が使えば、この方は、肛門の疾患だということを表現できるので、「誤診」はないからです。

しかし、専門医にとっては、何も意味しない言葉でもあります。

「肛門の病気だということは100も承知だ。専門医の前に来ているのだからね」。

 

時には、「痔」を「病名」と勘違いしている患者さんや、いやはや、お医者さんもいるのですが、そういう方と話をしていると、頓珍漢な笑い話を演じなければならないこともあります。

 

患者『わたしは痔です』

専門医『わかりました、では、何の病気か調べてから治療しましょう。』

患者「わたしは、痔なのですよ。前の病院でも医者からそういわれました。」

専門医「ですから、病気が何なのか、よく調べましょうね。」

患者「わたしは痔だと言っているでしょう。なせ、余計なことをするのだ!」

 

この会話をおかしいと感じない方もいるかもしれません。それほど、痔という言葉を病名と、体の髄から信じてしまっているのですね。「痔」という言葉を、「病気」という言葉に置き換えて繰り返せば、わかりやすくなるかもしれません。もう1度、このダイアローグを繰り返しましょう。

 

患者『わたしは病気です』

専門医『わかりました、では、何の病気か調べてから治療しましょう。』

患者「わたしは、病気なのですよ。前の病院でも医者からそういわれました。」

専門医「ですから、病気が何なのか、よく調べましょうね。」

患者「わたしは病気だと言っているでしょう。なせ、余計なことをするのだ!」

 

この小文の要点:「痔」は、肛門の何らかの病気を示す言葉であり、病名ではない。

この小文からの発展:だから、「痔のくすり」はない。これは、何にでも利く薬というような魔法の薬が存在しないのと同じである。

【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】


  大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャルの目次
001 このフェブサイトについて
002  なぜ、大腸・肛門・骨盤底の疾患に特化したホームページを作ろうとしたのか?
003  大腸ポリーがありますよ、といわれたら
004  大腸がんの話
005  22歳女性の肛門癌
006  大腸癌の危険率、そして、検診の確認の甘い罠
007  直腸カルチノイド
008  直腸カルチノイドの怪
009  潰瘍性大腸炎と大腸癌
009-2  潰瘍性大腸炎に大腸がんができやすいの?本当なの?
 010  クローン病
 010-2  大腸クローン病
 011  虚血性腸炎
 011-1  虚血性腸炎
 012  薬剤性腸炎=出血性腸炎
 013  抗生物質による偽膜性腸炎
 014   しばらく、感染性腸炎の話をします。
 015  O157腸炎 (O157大腸炎)
 016 トラベラーズ腸炎
 017  ノロウイルス腸炎
 017-2  胃は吐くために進化した臓器である
 018  MRSA腸炎
 019  骨盤炎 ダグラス窩膿瘍
 020  放射線性腸炎
 021  恐るべし、放射線治療後の膀胱
 022  閉塞性大腸炎
 023  腸閉塞と例え話あるいは、例え話の閉塞状況
 024  急性虫垂炎の24歳の女性
025   シマウマのような12歳の少女の虫垂炎
 026  卵巣がんのダグラス氏窩転移
 027  過敏性大腸症
 028  偽性腸閉塞症
 029  慢性便秘
 029-2 便秘ですか
 029-3
 大腸は便秘するためにある。
 030  巨大結腸症とS状結腸過長症
 031  肛門病スペシャル
 032
 肛門病スペシャルの名にふさわしい、ザ裂肛
 033  内痔核 その対称性の乱れ
 034  痔と直腸癌
 035  内痔核の話を続けましょう。
 036  痔と直腸癌 痔という病気
 037
 直腸異物
 038  肛門管の話を続けましょう
 039  内痔核の分類  Goligher分類
 040  骨盤底筋群ということばが好きな理由
 041  陰部神経のドグマ
 042  陰部神経の新しい検査法の開発には理由がある
 043  陰部神経潜時測定で何がわかったのか
 044  肛門を評価する(1)マノメトリーという准基本検査の罠
 045 肛門を評価する(2)デフェコグラフィー
 Defecography 排便造影)について
 046 肛門の“8の字ダンス”
 047  ポリープをとってほしかった
 048  大腸ポリープに対する切除法 blood patch EMRという方法
 049
 別稿 大腸ポリープに対する安全な新しいポリペクトミー(EMR)の方法
 050  診療の秘訣 ブラッドパッチEMR
 051 打撃フォームを変えるにも等しいこと
 052  欠番
 053  消化器外科医の実力
 054  新聞や雑誌に載る「病院の実力」の意味するもの
 055  セカンドオピニオン ブルース
 056 セカンドオピニオン 異聞
 057  不信感という時代のキーワード
 058  そう説明してくれればわかります
 059  セカンドオピニオン異聞 裏の裏
 060  文系のための医学誌
 061  包茎は手術するべきか、受けるべきか。わたしの裏技手術
 062  太ることと大腸癌
 063 さいたま新開橋クリニック
 064   直腸癌は疫学的に異なるカテゴリーに属する
 065  大腸癌の原因は肉食???本当に本当なの?
 066  盲腸ポート
 067  最善を尽くしましょうと請け負っていた外科医が
 068  病気が顔を変える